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3月, 2019の投稿を表示しています

民事信託(家族信託)に用いる銀行口座開設に向けて

 だいぶ前に投稿したまま間があいてしまいました.さて,過去に「 信託口の預金口座を開設できる銀行?? 」にて述べましたが,2019年頃の段階ですでに民事信託(家族信託)で用いる信託財産を預入しておく銀行口座は開設することができました.2023年になり少し情報をアップデートします. この間,証券会社ではかなり前から取り組んでいた野村證券のほかに,マネックス証券が傘下のマネックスSP信託を通じて有価証券等の信託することができるようになりました.色々と整備されつつあります. 肝心の銀行のほうは,三井住友信託銀行が先陣を切っていると思うのですが,各地の信用金庫や地方銀行において口座開設が可能になってきています.ただ,三井住友信託銀行での口座開設と信用金庫や地方銀行での口座開設では開設手順が少々異なる様相です.少し概要をまとめてみます. 三井住友信託銀行 三井住友信託銀行での信託に用いる口座開設ですが,士業が関与している契約書案文が必要です.なお,士業については三井住友信託銀行から指定されるわけではありませんので,委託者等が相談をしている士業から三井住友信託銀行にコンタクトを取ってもらって作業を開始するというものです. なお,民事信託用の口座であるからといって特別な口座開設や口座維持にかかる費用などはありません. 大まかな手続きの流れは以下の通りです. 士業から三井住友信託銀行へコンタクトする.この段階では信託契約は公正証書の案文(ドラフト)の段階であることが望ましいです.士業の絡まない契約書面であることが必要ですので,委託者と受託者がネットなどにあるひな形を参考にして書いたものでは受け付けられないと思われます. 士業と三井住友信託銀行との間で公正証書の案文について,三井住友信託銀行が口座開設に適した契約内容になっているかリーガルチェックします.ここで修正依頼などがあり,その修正内容が委託者,受託者,受益者にとって問題のないものであれば,修正を行います.自益信託以外のものや連続型の契約の場合は口座開設が難しいかもしれません. 士業と三井住友信託銀行との間で書面が固まった段階で,公証役場にて公正証書とします.ここの公正証書にする手続きは士業の方が良くご存じでしょうから 公正証書が完成したら,受託者が公正証書を持参してあらかじめ予約した三井住友信託銀行の店頭にて口座開設の...

信託口の証券口座というものは開設できるのか?

民事信託を活用しようと考えているような委託者の場合,保有資産の中に上場株式や投資信託などがあるケースがあるでしょう.(ここでは,オーナ企業の未上場・未公開株等ではなく,一般に東京証券取引所などで売買されている株式や証券会社で販売している投資信託を想定しています.) もし,委託者に後見人が就くような状況になった場合,その際に委託者本人の手元財産に上場株式や投資信託などがあったとすると,大抵の場合,後見監督人から「値下がりして財産を毀損してしまっても困るので,売却して利益確定してください」というような話が出てくるケースが多いのではないかと思います. こうなると,たとえば,その中に高配当な株式などが含まれていたりするとかなり残念な感じですね. ではどうするか?委託者から追加信託という形で上場株式や投資信託を信託財産に組み込むということが契約上可能であればそれを試みても良いでしょう.ただ,問題は証券会社がそれを可能とするか?ということです.信託法にあるように,信託財産として管理するものについては,名義書換できるものについては名義変更して管理処分することが必要です.となると,現金と違って株式は「名義」という概念が明確にあります.となると,「信託」という誰のものでもないけど,事務手続き上は「誰かの名義」にしないと中に浮いてしまうことになり,そんなことは事実上できません. となると,証券会社に信託口の口座を作成してもらえるかどうか?また,信託財産ではあるが,一旦,配当が払われる人(法人)は誰か?ということを明確にする必要があります. ここで問題となるのは二つ. 証券会社に信託口の証券口座を開設してもらえるか? 配当金等の税務処理をこなせるか? になるでしょう. 今回はまず問題提起までにしますが,順に考えみましょう. 証券会社に信託口の証券口座を開設してもらえるか? さて,これどうでしょうか.窓口に言って「信託口の証券口座を...」と説明しても大抵の場合は「投資信託ですか?」とか「信託銀行の代理店もやっているので,いくつか信託銀行の商品をご紹介しましょうか?」なんてかなり頓珍漢な対応があることがほとんどでしょう.ええ,私もそうでした.そもそも,民事信託とは?とかから丁寧に説明する必要がありますし,いきなりふら...

受託者は誰が就任するべきか?

受託者は誰がなるべきか?というのはとてもむずかしい問題です. というのは,受託者は信託法で定められた義務を忠実に守る必要があります. 誠実に信託事務を行ってくれる信頼できる人でないと,受託者をお願いすることはできませんし,また,受託者に万が一(死亡や怪我等で受託者としての義務を全うできない)のことがあって,受託者が変わるような事態になったことに備えると,後継の受託者も信頼できる人を探しておく必要があります. とはいえ,このあたりは実は人でなくて,社団法人を設立してチームで受託者として対応するということもできなくはないです(ただし,かなりの労力・コストを伴います). 委託者よりも先に死亡するようなことがあると,受託者が変更する手間がかかったりすることもあることから,大抵の場合は委託者よりも若い人が就任するべきです.とはいえ,民事信託にはいろいろなケースがありますから,そうでないパターンもたくさんあります. 典型的な福祉型の民事信託(高齢の委託者の福祉を維持・向上させることを目的とした民事信託)の場合,委託者の次の世代あたりが良いでしょう.同世代だと受託者が死亡してしまうリスクが高まります. 具体的な例でいうと... 委託者:80歳の父親(要介護3・在宅介護) 受託者:50歳の子(委託者である父親と同居) 受益者:委託者と同一 という感じがあるかもしれません.これはこれでありですが,80歳の父親が要介護3程度の状態で在宅介護していたりするところに,実は50歳の子は現役で働いていたりするとなると,受託者である50歳の子は,本業,介護,民事信託となかなかにハードな感じです. これが, 委託者:80歳の父親(要介護3・施設入居中) 受託者:50歳の子(委託者である父親と別居) 受益者:委託者と同一 くらいになるとだいぶ受託者の負担は軽減されます.これは介護の負担は単なる力仕事云々だけでなくて,ケアマネや医療機関等との連絡など様々なことをこなす必要があったりするようなことがないからです.施設に入っている分,施設利用料等の費用はかかりますが,委託者,受託者共倒れというようなことは避けられます. ひとつ大事なことは,受託者候補となる人が複数いた場合,それはたとえば,上記の例で言えば,委託者に子供が複数いて,その中の誰かにお願いする...

信託口の預金口座を開設できる銀行??

信託口の預金口座を開設できる銀行ってそんなたくさんあるの?ということですね.気になりますね. 多くはありませんが,ここ最近増えつつあります. 三菱UFJ銀行,三井住友銀行,みずほ銀行,りそな銀行といった都市銀行だとまだ対応は難しそうですが,以下のようなところですと可能性があります. ・信託銀行 ・信用金庫 「え,信託銀行なんて使ってないよ」という方がほとんどでしょうか.まあ確かに,銀行に比べて,信託銀行は支店の数も限られていますし,普通の銀行とはちょっと違いますからね. 信用金庫は,年金受給者や自身で会社を経営している方にはとても馴染みがあるかもしれませんね. ここで注意したいのは,信託銀行や信用金庫であればどこでもやっているというわけではないことです.残念ながら現時点ではまだごく一部です. どこの金融機関も突然出向いて,すぐに信託口の預金口座を作ってもらうようなことは不可能です.事前に協議や交渉が必要です.このあたりは,受託者就任予定の人か,士業経由で金融機関と連絡をとって対応するのが良いでしょう. 気になる具体的な金融機関の名前などは別の機会に書きますね.

信託口の預金口座は簡単に開設できるの?

結論からいうと,そう簡単ではないけれど,少しだけ簡単に開設できる銀行ができてきた,というのが現時点(2019年3月)での回答でしょうか. 信託口の預金口座はたしかに受託者が分別管理義務を果たす上では重要なツールなのですが,銀行の視点から見れば,信託契約の当事者でもないし,単なる「手のかかる」「ひとつの口座」でしかありません. ということで,信託口の預金口座を開設できるとされる銀行は以下のような口座開設のためのハードルをほとんどが設けています. ・公正証書にする前の案文の状態で開設可否を審査する(ようするに,銀行の目線できちんと問題がないものなのか,確認するということです) ・最低預入額の設定(上記の通り「手のかかる口座」でしかないので,こういったハードルがあります) このハードルあなたにとって高いものですか?そうでもないですか? さて,無事このハードルを超えたとして,公正証書化した契約書を持参すれば信託口の預金口座が開設できます.開設後には委託者から信託口の預金口座に送金(振込)してもらう感じですが,委託者が高齢で,銀行に出かけられないなどの場合はこれまたなかなか大変です.

分別管理義務??

分別管理義務??って何?って感じですね. 証券会社などを通じて投資している方はもしかしたら聞いたことがあるかもしれませんが,これは自分のものとは分けて管理するという意味です.民事信託では,その元となっている「信託法」で「分別管理義務」を求められています.これは,受託者は委託者から託された財産を自分の財産とは分けて管理するという意味です.たとえば受託者がもともと使っている口座で管理するなどというのは,それが仮に受託者が完璧に「これは委託者から託されたもの」とわかっていたとしても,分別管理義務を果たしているとはみなされない可能性があります. たとえば,受託者が死亡した場合,一般的には銀行の口座は相続に関する手続きを経ないと凍結解除されません.また,受託者が破産してしまった場合,これまた一般的には受託者の口座は差し押さえされてしまうかもしれません. こういった事態に備えて,信託財産は受託者のものではなく,信託されたものということを明確にするということが肝要です. となるとどうするの?ということですね. そこで出てくるのが,「信託口」の預金口座というものです. 個人の場合,預金口座は通常,本人名義のものしか開設できません.なので,普段から利用している銀行に出かけていって「もうひとつ口座作りたいのだけど?」という程度でできる口座ではなく,受託者個人とは切り離されたものである必要があります. ちなみに余談ですが,銀行に出かけて「信託口の預金口座を作りたい」と言っても,大抵の場合は「???」となってしまい,「信託商品ですとこんなものが...」とか「投資信託ですか?」なんていう回答があるかもしれません.まあこれはまだ十分に民事信託が浸透していないということの裏返しでもあるのかなと思います. 別途,信託口の預金口座や証券口座について書き連ねてみましょうか,

民事信託をおこなうには?

民事信託を行うには何が必要でしょう? 契約行為は口頭でも成立するものもありますが,民事信託の場合は契約書にします.しかもその契約書は公証役場(これまた聞き慣れない方もいるかもしれませんが,ようは法律の専門家である公証人が書面の中身について証明してくれる機関です)で公正証書として作成することになります. ひとまず民事信託で「必要なもの」をここで書いてみましょう. ・民事信託を行うための公正証書にした契約書 ・委託者,受託者等の登場人物に関する本人確認資料 ・契約を締結する当事者の実印及び印鑑証明(本人確認資料としても利用することが多いです) ・(オプション)信託される財産に不動産があるのであれば,不動産の登記 ・(オプション)信託される財産にお金があるのであれば,信託口の預金口座 ・(オプション)信託される財産に上場株式があるのであれば,信託口の証券口座 けっこうたくさんあります.これらをできるだけクイックに行うためには,法律の専門家に入ってもらうのが効果的です.たとえば,弁護士や司法書士です.この手の人々は信託法(や周辺の関連する法律)に基づいて誰でも契約書を作成できるのか?と思いきやそうではありません.民事信託は個々人の環境や信託される財産,それらの財産をどうしていきたいかなど,かなり多岐にわたるケースが考えられます.よって,民事信託に関する契約書作成を行ったことのある士業の人に出会うことが大切です. さて,士業の人と運良く出会ったとしましょう.次に必要なのは,士業と関係者でどのように民事信託を行っていくのか?について議論するところが大切です.それに基づいて,公正証書にするための契約書の案を作成していくという感じです. 公正証書にするまでには以下のことが必要です. ・士業の人と一緒にどんな民事信託を結ぶのか十分議論・相談する(ここが最も重要かつ時間のかかるところでしょう) ・契約書の内容を法的に問題のないような書き方で作成すること(これは士業の人にほとんどお任せしつつも,自分でもきちんと読み込みましょう) ・委託者から信託される財産の特定(これは主に委託者が率先して行うことですが,委託者が高齢であったりするとなかなかこれも大変ではあります) ・契約書の案(案文)をベースに金融機関に相談して,信託口の預金口座が開設できるか...

民事信託とは?

「民事信託」ってなんでしょう? 「投資信託なら聞いたことあるぞ」という方とか,「信託銀行とかのサービスじゃないの?」なんていう方もいるでしょう. 「民事信託」というのは,「信託法」という法律に基づいて行われる「信託行為」のことを言います.簡単に言えば,読んで字のごとく,「信じて,託す」です.この場合,「託す」ものがなにかあるはずで,それは例えば,お金だったり不動産であったりするわけです. 「民事」ってなに?ということでいうと,これは法令上の定められた用語というよりは,信託銀行などが行うビジネス(商売)目的の信託を「商事信託」ということに対して,ビジネス(商売)を目的にするのではない,一般の人々の間で行う信託行為を「民事信託」と読んでいるようです.世の中では,民事信託ではなく,家族信託というように読んでいる人々もいるようです(どうやら,家族信託は商標登録されているようなので,今後は「民事信託」と呼びます.). さて,民事信託って言葉はまあなんとなくわかったような気がするけど,信託ってなんだろう?というところを,法律家ではない一般人の目線で別途整理してみます.

ようこそ「民事信託」の世界へ

ようこそ「民事信託」の世界へ なんて書くと,とても堅苦しい世界なのではないか?とか,大変なのではないか?とか思われる方もいるだろうけれど. 「民事信託ってなに?」という方もいれば,「もう十分わかっているよ,具体的な信託契約の注意点を教えてよ」,「信託契約はしたものの色々と悩んでいて...」などなど色々なレベルや状況の方がいるだろう. 本サイトでは「民事信託」について,主に「受託者」の立場から述べることとしたい.というのも,実際に民事信託が動き出すと,その中心的な役割は「受託者」にかかっているからだ.すごく乱暴にいうと,委託者は「よろしくね」と,「とある目的達成」をお願いする立場で,お願いされた「受託者」がいろいろと動くことで「受益者」に対する「目的達成」を行うものである. 受託者がフリーズしてしまったら何も進まないし,目的も達成できないということ.なので,信託契約では,たいていの場合は受託者にもしもの場合があったことに備えて,後継の受託者を指定したり,後継の受託者を指定できる人を指定しておいたり...など手厚いリスクヘッジを行うことが普通である. さて,ちまたには「民事信託」や「家族信託」に関する書籍やウェブサイトがたくさんあるが,それらの多くは「民事信託の契約書を公正証書にするところまで」が中心で,実際のその後に控えている日々の受託者の実務について述べられているものは多くない. それもそのはず,士業の方々(特に,司法書士や弁護士)は契約書の案文を作って,公正証書にするところまでは手厚くフォローできるのだけれど,実際のところ受託者として士業の方々が受託している方はなかなかいないのではないか?と思う.それは法律上の問題(士業の人々が業として受託者に就任することはできない)だったり,士業の方々の親世代がまだそういった状況に単にないから...などいろいろな理由があるだろう. ということで,ここでは「受託者」目線で「民事信託」について語っていきたい.ただ,信託に関する実務については,日々の業務はもちろんだが,財産管理・運用・処分,税務などかなり広範囲に渡るが,法令上,個別具体的な解説などができないこともあるし,また,実務が定まっていないところもあるので,抽象的な書きっぷりだったり,一般論で記述してみたりなどにとどまる可能性もあることをあらかじめお...